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別府の考え ~ シャンソンとは ~ その11 

 「愛の讃歌」
 1番有名なシャンソンかもしれません。
 伝説的なフランス人歌手エディット・ピアフの代表曲ですね。

 MI0002034694.jpg

 日本では、越路吹雪さんが歌った大ヒット曲として、ひろく知られています。
 また今、日本で、この曲を歌う歌手ということなら、美輪明宏さんの名前が出てくるでしょう。

 そして越路吹雪さんは、この曲を、岩谷時子さんがつけた、原曲の歌詞とは内容が異なる日本語詞で歌いました。
 他方、美輪明宏さんは、曲の冒頭に、原曲の歌詞の訳詞を、台詞のように独白した後、フランス語で歌うスタイルをとっています。

 日本で、この曲を歌おうとすると、方法としては、この2つのどちらかしかないはずだ、というのが別府の考えです。
 つまり原曲のイメージを再現しようとすると、日本語の訳詞をつけて歌うことが出来ない曲だと思うのです。

   MC900429829_20140319230137261.jpg

 ちなみに原曲の歌詞の内容というのは…
   あなたが愛してくれるなら何もいらない
   あなたが望むなら何でもする
   あなたが死んだって構わない
   私も死ねば、神様が2人を永遠に結び付けてくださるから
 という何と言えばいいのか、非日常の極致のような内容です。

   MP900448299.jpg

 恋人が死んでも構わないと言い放つ発想は日本人には無いように思います。
 「死んで、あの世で一緒になりましょう」という心中ものの文化はありますが、この歌で歌われているものが、心中ものの世界観と同じだと言い切るには、ためらいを覚えます。
 まして、これほどの激情的な思いを、声高に述べるという行為には、それ自体、日本人の美意識とマッチしないものを覚えます。

 そういうことも係わるのだと思います。この歌詞の内容を日本語にしてしまうと何かしら非現実的な感覚が伴うのです。
 この歌詞の内容が切々と訴える激情は、この曲に、何ともいえない緊張感をもたらしています。そして非日常のもたらす、この危うい緊張感を、原曲のフランス語歌詞は、ギリギリで、そのバランスを保ちながら、歌の世界として成立させているように感じられるのです。

 MC900370208.jpg

 だから原曲のイメージを再現する方法は2つ…
 歌詞の内容を変えて日本語詞をつけ、その日本語詞の内容のイメージを原曲の歌詞内容と共通のものとするか、
 フランス語で歌いつつ、歌詞の内容を聴き手にイメージしてもらえる工夫をする。

 前者が越路吹雪さんで、後者が美輪明宏さんだと思います。
 原曲の再現を、より忠実な方法で実現したい別府は、後者を選択しております。
 訳詞は別府です。

 

 愛の讃歌を作り、歌った後、本当に恋人のマルセル・セルダンを飛行機事故で失ってしまったピアフが、それでもなお歌い続けたことで、この曲は、世界中の人々に忘れられない、さらに強烈なインパクトを残したのでしょう。

 (次回このシリーズ、とりあえずお休みです。なぜって、それは…)


 
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この記事に対するコメント

先日はありがとうございました。

先日はお忙しいところ質問にお答えいただいて、大変感謝いたします。

オリジナルとカバーとの関係、非常に興味深いテーマです。オリジナルに忠実にカバーするか、全く異なるアプローチを試みるのか。歌手の方の解釈や思考の数だけ無限に幅が広がっていきますね。

Easy Music Reviews #- | URL | 2014/03/20 00:42 * edit *

NoTitle

こんばんは。
夜分遅くにすみません。

しなやかで、しっとりと歌われているお姿が印象的です。
素敵な世界に包みこまれました。

結依 #- | URL | 2014/03/20 01:36 * edit *

NoTitle

ステキです。
私達も『愛の讃歌』をベルで演奏するのですが
このしっとり感がなかなか出せずに苦労しています。
別府さんの歌声を聴かせて頂き、
譜面を追っているだけでなくお互いのタイミングや気持ちも合わせながら
取り組んで行かなければ…
と、新年度を目の前にし決意を新たに致しました。
ありがとうございました☆

みむらん #- | URL | 2014/03/20 09:29 * edit *

応援しています。

 先日は、入力誤字が多くて恐縮です。
 原語か訳詞か、改めて考えると難問です。オペラは、原語がいいし、ポピュラーもサイモン&ガーファンクル、ビートルズは原語でしょうし、シャンソンやカンツオーネも原語の良さは捨てがたいものがあり、私自身は「原語」愛好派です。
 オペラを聞くときは、イタリア語、ドイツ語など分かりませんので、紙の訳詞を大体頭に入れて「予習」して、原語で味わっています。そうすると、世界が広がって来ます。
 訳詞の時は、歌い手が好きか、その人の訳詞の姿勢が好きか、歌い方が好きか、で大きく左右され、好悪の要素が増えます。
 別府さんも、理詰めで考えておられ、これからが大いに期待できます。一つの「地位」を築いてください。応援します。

感動人 #CRSHTEAU | URL | 2014/03/20 12:31 * edit *

NoTitle

そうですよね、別府さまが言われる通り、そんな気がします。
例えば、イタリアンオペラの訳詩などををみると、ちょっと恥ずかしくなるけれど、カラスの独特の歌声、パバロッティの迫力には感動しました。
同じように、ソウルミュージック、くささの極みみたいなテディペンダグラスなども聞いてしまうと涙が・・・
日本人の感性とはかけ離れていると思いますが、何か訴えかけるものが確実にあるのでしょう。
最近になって肌感覚にシャンソンがフィットしてきた、もっと言えば、やっと聴ける体になった、そんな気がして真剣に聞いてみたくなってきています。

soukenko #- | URL | 2014/03/20 15:28 * edit *

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# |  | 2014/03/20 16:38 * edit *

NoTitle

こんばんは~♪
ほとんど知られていませんが、元宝塚スターだった上月晃さんが1995年に舞台で歌われた「愛の賛歌」の録音テープを聴いたことがありますが、訳詩そのままで歌われています(友人の親が舞台を見たそうです)。
歌いっぷりもピアフに非情に近かったですよ(*^^)
別府さんのフランス語版素晴らしいと思いました^^

まり姫 #8m8hig/. | URL | 2014/03/20 19:11 * edit *

いつもありがとうございます。

素晴らしい連載で、毎回楽しみにしていました。うまく歌うということが単に音程を外さずに歌うということやドラマティックに熱唱することだけではないということが良く分かりました。
フランス語は全く分かりませんが、「あなたが死んだって構わない」というのは、あなたが死んだらこの愛も終わるというのではなく、あなたが死んだとしても愛し続けるという意味でしょうか?

歌い手と聞き手では曲に対する構えも違うのでしょうね。聞き手の僕は、曲そのものに惹かれる場合と歌い手に惹かれる場合もありそうです。

またの講義を楽しみにしています。

忠 #- | URL | 2014/03/20 20:45 * edit *

NoTitle

別府さんとの出会いはこの曲をYouTubeで検索してのこと故にこうして記事になると一筆啓上です(笑)
日本語訳詞が2パターンあり、どちらも素敵ですよね。
昨年、元タカラジェンヌの安奈淳さんのステージを見ましたがラストの一曲が愛の賛歌でした。
あと、元々、YouTubeの検索となったのが若くしてお亡くなりになられた歌姫、本田美奈子さんの愛の賛歌(TV放映でキーボードが松岡直也さん、ギターが渡辺香津美さんって夢の共演)
元来、原曲のもつ誌の意味合いは「愛する思い」であり、それを日本語にして正しく伝わるとは思えないものであり
いい曲って耳で聴き脳で文字を並べるよりその情景を思い描けるのが名曲の名曲たる所以ですよね
そんな意味では正しくこの愛の賛歌ってその代表のような気がします。

ひぐま #X.Av9vec | URL | 2014/03/20 21:49 * edit *

シャンソンの日常と激情

おはようございます

文化も背景も違った
外国の歌を
対訳するのはできても
歌詞として歌に当てはめるのは
やはりどこか歪になってしまいますよねぇ~

因みに
美輪明宏さん訳詞だとおもうのですが
和訳の歌詞があります

『高く蒼い空が 堕ちてきたとしても
 海が轟いて 押し寄せたとて
 あなたがいる限り 私は畏れない
 愛する心に 畏れるものはない

 あなたが云うなら
 この黒髪を
 何色にでも

 あなたが云うなら
 たとえ地の果て
 世界の果ても

 あなたが云うなら
 どんな恥でも
 耐え忍びます

 あなたが云うなら
 愛する国も
 友も棄てよう

 いつか人生が あなたを奪っても
 この愛があれば それで幸せ
 死んでもあの空で 悲しみも何もなく
 常しえに謳おう 愛を讃える歌』

↑漢字は僕が
 勝手にあてたものです(^^;

岩谷時子さんの歌詞よりは
本来の意味合いに近いですが
原詞の世界観とは
やはりやや違っていますよね

他に永田文夫さんや井田誠一さん
歌手本人が歌詞を書いたものまで
いくつか在るようですが
どれもビミョ~にいい当てて
ビミョ~に違っている
歌い手と聴き手
それぞれがそれぞれの解釈で
その歌が愛されていれば
それでいいのかも知れませんね(^^ゞ

まっとし #G3xv5MFg | URL | 2014/03/21 04:15 * edit *

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# |  | 2014/03/21 21:17 * edit *

Re: Easy Music Reviews さんへ

いえいえ、ご丁寧なご挨拶おそれいります。

ほんとにオリジナルとカバーの関係って、無限ですよね。

うっかりするとオリジナルが何だったのか分からないほど歌詞もアレンジも違うけど、この手があったかぁ、なんて嬉しいショックを受けるような斬新な作品になっていたりしますものね。

別府葉子 #- | URL | 2014/04/06 15:32 * edit *

Re: 結依 さんへ

こんにちは。

お気に召していただいたようで大変うれしく思います。大切に歌いたい曲の1つです。

コメントありがとうございました。

別府葉子 #- | URL | 2014/04/06 15:35 * edit *

Re: みむらん さんへ

こんにちは。

お気に召していただき、ありがとうございます。

気持ちを1つにして頑張ってくださいませ。

素敵なベルの演奏が聴こえてくるような気がします。

別府葉子 #- | URL | 2014/04/06 15:39 * edit *

Re: 感動人 さんへ

こんにちは。

そうですね。原語で曲を聴く楽しみは、オリジナルなイメージに触れることが出来るという意味で、格別なものがありますね。

訳詞の場合は、どうしても好き嫌いが分かれてしまう部分があると思います。

ところで別府本人は、あんまり理屈っぽい人間ではありません(笑)

別府葉子 #- | URL | 2014/04/06 15:45 * edit *

Re: soukenko さんへ

こんにちは。

音楽との付き合い方は、人それぞれだと思いますし、感じ方もそうなのだと思いますが…

soukenko さんの「最近になって肌感覚にシャンソンがフィットしてきた、もっと言えば、やっと聴ける体になった、そんな気がして」という言い回しには、思わず、吹き出しかけました(笑)

人生経験を積んでというところなのでしょうか?

別府葉子 #- | URL | 2014/04/06 15:50 * edit *

Re: 鍵コメ Aさんへ

こんにちは。

これからも伺いますよ。

何となく故郷を思い出させてもらえますし。

別府葉子 #- | URL | 2014/04/06 15:53 * edit *

ちょっと補足説明

「愛の讃歌」については、もちろん原曲の歌詞の内容に沿った「日本語訳詞」がいくつも存在しますし、これらの訳詞で、この曲を歌っている方はたくさんいらっしゃいます。
これらの歌唱を否定する意図は全くありません。
この曲は、歌詞の内容の非日常性と、曲のメロディーにのせられたフランス語とが相まって、独特の緊張感をもった世界を作っていると、別府には感じられます。
そして、この独特の世界を、日本語の歌唱によって再現することが、別府には困難に思えます。
そこで、「原曲のイメージの再現」にこだわりを持つ別府は、歌詞の内容に沿った日本語訳詞による歌唱を選択しないことを説明しています。

別府葉子 #- | URL | 2014/04/06 16:23 * edit *

Re: まり姫 さんへ

こんにちは。

貴重なお宝テープですね。

何人かの方が「日本語訳詞による歌唱例」に言及して下さっていたので、記事の内容が誤解される可能性がなかったか、ちょっと心配になったので、コメント欄に「補足説明」を入れておきました。

別府葉子 #- | URL | 2014/04/06 16:30 * edit *

Re: 忠 さんへ

こんにちは。

とても率直なご意見をいただきまして、ありがとうございました。

聴き手にとって魅力的な歌というものが、どういうものなのか、正解にはまだ辿りついていないように感じます。

「あなたが死んだって構わない」の意味について、別府は、愛の永遠性、つまり死によっても、この愛は引き裂かれることはないのだ、という思いと理解しています。

別府葉子 #- | URL | 2014/04/06 16:36 * edit *

Re: ひぐま さんへ

ひぐま さんへ、Youtube検索で、別府を知って下さったのですかー

なんだか嬉しいご縁です。

あ、本田美奈子さん、別府も、この方の歌、好きなんですよね。

歌うことへの情熱のようなものがヒシヒシと感じられるとでも言うか…

コメントありがとうございました。

別府葉子 #- | URL | 2014/04/06 16:45 * edit *

Re: まっとし さんへ

こんにちは。

そのとおりだと思います。

訳詞者には、その曲を、そのように訳する理由があり、思いがあるでしょうし、歌う側には、そのように歌う理由や思いがあるでしょう。

聴き手が、歌を聴いてどう思うかは、その人自身の自由であるように。

何人かの方が「日本語訳詞による歌唱例」に言及して下さっていたので、記事の内容が誤解される可能性がなかったか、ちょっと心配になって、コメント欄に「補足説明」を入れておきました。

別府葉子 #- | URL | 2014/04/06 16:57 * edit *

Re: 鍵コメ Sさんへ

読ませていただきました。

すごい力作ですね。でも内容が面白いので、一気に読めます。

時代背景をうまく感じ取れない部分があって、当否は云々できないですが、とても説得的な内容ですし、知らなかったーっていうものもあって。

ありがとうございました。

別府葉子 #- | URL | 2014/04/06 17:25 * edit *

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